大阪地方裁判所 平成10年(ワ)5720号 判決 2000年8月30日
原告
宅間誠
被告
橋川一敏
主文
一 被告は、原告に対し、金一五七三万一五一一円及びこれに対する平成八年一〇月一〇日から支払済みまで年五分の割合による金員を支払え。
二 原告のその余の請求を棄却する。
三 訴訟費用は、これを二分し、その一を原告の、その余を被告の負担とする。
四 この判決は、一項に限り仮に執行することができる。
事実及び理由
第一請求
被告は、原告に対し、金三五五五万一二二九円及びこれに対する平成八年一〇月一〇日から支払済みまで年五分の割合による金員を支払え。
第二事案の概要
一 争いのない事実等(証拠により認定した事実については証拠を掲記する。)
1(本件事故)
(一) 日時 平成八年一〇月一〇日午前〇時四三分ころ
(二) 場所 大阪市旭区中宮四丁目三番五号先路上
(三) 加害車両 被告運転の普通乗用自動車(なにわ五七は五七七一)
(四) 被害車両 原告(昭和四六年二月一四日生、当時二五歳)所有の普通乗用自動車
(五) 態様
(1) 本件事故現場は、中津太子橋線の片側二車線の道路で、城北公園の南側に位置し、東が京都方面行き、西が梅田方面行きの東西方向の道路である。
(2) 原告は、城北公園の南側歩道と東行車線が接する位置で交差点内に被害車両を停止させて下車し、被害車両前部に立ち、折から現場道路の横断歩道を南から北に向かい横断していた友人が原告の方にくるのを待っていた。
(3) 被告は、加害車両を運転して本件道路を西から東に向かい走行し、停車中の被害車両に追突させ、押し出された被害車両が原告に衝突して原告が転倒したもの
2(責任)
被告は、前方注視義務を懈怠した過失により本件事故を発生させたものであるから、民法七〇九条に基づく責任がある。
3(傷害、治療経過、後遺障害)
(一) 傷害(乙二ないし四)
外傷性坐骨神経不全麻痺、頸部捻挫、腰部捻挫、全身打撲
(二) 治療経過
(1) 医療法人浄和会水野病院(乙二)
平成八年一〇月一〇日から同年一一月五日まで通院(実通院日数九日)
(2) 医療法人天野クリニック(乙三)
平成八年一〇月一四日から平成九年五月一〇日まで通院(実通院日数五一日)
(三) 後遺障害(甲九、乙二)
(1) 原告には、<1>大腿周囲が右四九センチメートル、左四七・五センチメートルと左右差が生じ、<2>左大腿以下足踵までの知覚鈍麻、<3>大臀筋、大腿四頭筋等の筋力が左側半減、<4>筋電図による傷害部位のジャイアントスパイクがあり、神経麻痺の徴候が認められ、腰痛、左座骨神経領域の痛み、しびれ、知覚障害、左下肢の筋力低下、左足関節の拘縮傾向等により走行できない、左足でのジャンプができない、左足で踏ん張れない等の後遺障害が残った。
(2) 右後遺障害について、自動車保険料率算定会は、後遺障害等級一二級七号該当と認定した。
4(損害填補)(二七〇万二三三八円)
(一) 治療費 四六万二三三八円
(二) 自賠責保険金 二二四万円
二 争点
1 損害
(一) 休業損害 四八〇万六六六二円
資格 車両系建設機械(解体用)運転技能、車両系建設機械(整地、運搬、積み込み用、掘削用)運転技能、ガス溶接技能
収入 建築土木解体業者の下で働き、本件事故前平均月収六八万六六六六円
休業期間 症状固定までの七か月間
68万6666円×7か月
(二) 傷害慰謝料 一〇〇万円
(三) 後遺障害慰謝料 二四〇万円
(四) 逸失利益 二五三四万四五六七円
労働能力喪失率 一四パーセント
原告(昭和四六年二月一四日生)(症状固定時二六歳)
就労可能年数 四一年(新ホフマン係数二一・九七〇)
68万6666円×12か月×0.14×21.970
(五) 弁護士費用 二〇〇万円
2 過失相殺
(一) 補助参加人
原告は、本件交差点東詰、横断歩道手前の交差点内に駐車して車外で佇立中であった。
交差点内においては、駐車は禁止されている(道路交通法四四条)。
よって、本件事故発生については原告にも過失があるというべきであるから、過失相殺をすべきである。
(二) 原告
本件事故は、歩行者としての原告と車両運転者としての被告との間で発生したものであって、現場近くに原告は道路交通法違反の状態で被害車両を駐車させていたとしても、右違法駐車をもって原告に過失があるとはいえない。
第三判断
一 争点1(損害)
1 休業損害 一六五万四二一六円
証拠(甲六ないし八、証人坂幸雄、原告本人)によれば、原告は、車両系建設機械(解体用)運転技能、車両系建設機械(整地、運搬、積み込み用、掘削用)運転技能、ガス溶接技能の資格を有し、本件事故当時むつみ興業(経営者坂幸雄)で就労していたことが認められる。
なお、甲三(東樹産業作成の休業損害証明書)、一七ないし二〇(給料明細)があるが、本件事故当時東樹産業は倒産しており(証人坂幸雄)、原告に給与を支給しうる状態ではなかったことが認められるのであって、右記載によって原告の本件事故当時の給与額を認定することはできない(証人坂幸雄は甲一七ないし二〇の額程度の給与額であった旨証言するが、これを裏付けるに足りる証拠はない。)。
しかし、前掲証拠からすれば、本件事故当時原告は平成八年賃金センサス男子労働者全年齢平均賃金である年五六七万一六〇〇円の収入を上げていたものとは認めうるから、これを基礎収入とし、原告の傷害の部位、程度及び通院状況に原告は平成八年一〇月中あるいは一一月には就労を開始していたことが認められる(乙二ないし四)から、これらの事情を考慮すると、本件事故から症状固定までの七か月間、平均して五〇パーセントの労働能力が制限されたものとして休業損害を算定するのが相当である。
すると、休業損害は、次の計算式のとおり一六五万四二一六円となる。
(567万1600円/12か月)×0.5×7か月=165万4216円
2 傷害慰謝料 九〇万円
原告の受傷の部位、程度及び通院状況からすると、原告の傷害慰謝料は九〇万円と認めるのが相当である。
3 後遺障害慰謝料 二四〇万円
原告の後遺障害の程度からすると、後遺障害慰謝料は二四〇万円と認めるのが相当である。
4 逸失利益 一三七三万二一六八円
原告の逸失利益については、次のとおりとするのが相当である。
労働能力喪失率 一四パーセント
就労可能年数(症状固定時二六歳) 四一年(ライプニッツ係数一七・二九四四)
576万1600円×0.14×17.2944=1373万2168円
5 治療費 四六万二三三八円(争いがない。)
6 以上を合計すると、一九一四万八七二二円となる。
二 争点2(過失相殺)
本件事故は、駐車禁止場所である交差点内に被害車両を駐車しその側に立っていたことによって原告が負傷したものであり、本件事故の原因は被告の前方不注視にあるが、右駐車禁止場所に駐車した点において原告に過失が認められるから、前記損害額から一割を過失相殺するのが相当である。
前記一九一四万八七二二円からその一割を控除すると、一七二三万三八四九円となる。
三 損害填補(二七〇万二三三八円)
前記一七二三万三八四九円から既払の二七〇万二三三八円を控除すると、一四五三万一五一一円となる。
四 弁護士費用 一二〇万円
本件事故と相当因果関係のある弁護士費用は一二〇万円と認めるのが相当である。
五 よって、原告の請求は一五七三万一五一一円及びこれに対する本件事故の平成一〇年一〇月一〇日から支払済みまで民法所定の年五分の割合による遅延損害金の支払を求める限度で理由がある。
(裁判官 吉波佳希)